コラム
補助金・助成制度

難聴になると障害者手帳が発行できる?メリットやデメリットを解説

ファミリー補聴器店長の吉野です!今回は難聴の方と障害者手帳の発行について解説します。

難聴の程度によって、障害者手帳を受け取れます。障害者手帳は取得により多くの支援が受けられ、生活の心強い味方になるためおすすめです。

この記事では、障害者手帳の基本や発行方法などを解説します。メリットやデメリットについても紹介するので参考にしてください。

難聴と障害者手帳の関係とは?

生活が特に不自由な程度の難聴(高度難聴や重度難聴)になると障害者手帳を発行してもらえます。その理由は、聴覚障害が「身体障害」に該当するためです。

まず、障害者手帳はどういったものなのか、また、発行してもらう条件について解説します。

障害者手帳ってどういうもの?

障害者手帳には以下のような種類があります。

種類特徴
身体障害者手帳視覚、聴覚、平衡機能、音声、言語、咀嚼機能、肢体不自由、内部障害などが対象1~6級に区分される
原則更新は不要
精神障害者保健
福祉手帳
統合失調症、精神作用物質の依存症、精神疾患、うつ病、自閉症、一部発達障害などが対象
1~3級に区分される2年ごとの更新が必要
療育手帳知的障害のある18歳未満の方が対象一定期間で再判定が必要
運営方法や区分は都道府県によって異なる

聴覚障害の場合は、上記の通り身体障害者手帳に区分されます。

身体障害者手帳は、身体の機能に障害のある方が取得できる手帳です。健常者と同じような生活を送るための味方になる証明書です。精神障害者保健福祉手帳と異なり定期的な更新は原則的にありませんが、障害の状態に変化が予想される場合は一定期間を置いてから再認定が行われます。

身体障害者福祉法に基づいて、地方自治体や都道府県で申請でき、障害者総合支援法などの支援を受けられます。

難聴レベルはどれくらいで取得できる?

難聴の方が身体障害者手帳を取得する際の難聴レベルについては以下の通りです。

障害者手帳の等級難聴レベル特徴
2級①両耳それぞれの平均聴力が100dBHL以上両耳がほぼ聞こえない
3級①両耳それぞれの平均聴力が90dBHL以上耳介に接しないと大声を理解できない
4級①両耳それぞれの平均聴力が80dBHL以上
②両耳の最良の語音明瞭度が50%以下
耳介に接しないと話し声が理解できない両耳で普通の話し声が聞こえにくい
6級①両耳それぞれの平均聴力が70dBHL以上
②悪聴耳の平均聴力が90dBHL以上かつ、良聴耳の平均聴力が50dBHL以上
40cm以上の距離での会話が理解できない片耳の聴力が低い

都道府県ごとに若干異なりますが、一般的に、2級、3級、4級の①、6級は純音聴力検査によって判断され、4級の②は語音明瞭度検査によって判断されます。2級については、さらに精密検査を実施する場合があります。
純音聴力検査の結果から6級の基準に満たない場合であっても、語音明瞭度検査の結果が50%以下であれば4級に該当することがあります。なるべく両方の検査を受けることが望ましいようです。

2025年に東京都で聴覚障害者の国際スポーツ大会『デフリンピック』が開催されますが、こちらの出場資格の一つは聴力レベルが55dB以上であることが定められています。国際的には聴覚障害者と見なされる聴力レベルであっても、日本では必ずしも障害者手帳を取得できるとは限りません。

まずは耳鼻科で検査を受け、自分の難聴レベルがどのくらいか把握しましょう。

障害者手帳のメリット・デメリットを紹介

障害者手帳の取得で得られるメリットやデメリットを解説します。基本的には、福祉サービスを受けられる点からメリットが多いものの、中には所有していることでデメリットと感じる場面もあります。

メリット・デメリットを知ることで、取得後を想像しやすいので参考にしてください。

メリット|生活の手助けとなる!

障害者手帳を取得すると、日常生活での強い味方になってくれます。具体的には、以下の点です。

  1. 税金に関する支援を受けられる
  2. さまざまな割引制度を受けられる
  3. 就労支援などもある

難聴になってしまうと、補聴器などの高額な機器を購入しなくてはならない可能性があります。その際、税金関係の支援が受けられたり、公共交通機関の割引制度を受けられたりすると、金銭面での負担が軽くなるためメリットです。

また、 障害者雇用枠といった、障害者の方でも就労できるルールが適用されます。もっている障害を開示し、採用側も理解したうえで採用することで、障害者であっても働ける環境を整えられます。

デメリット|精神的負担になるかもしれない?

障害者手帳を所有することによるデメリットは基本的にありません。しかし、以下のような点についてデメリットと感じる可能性があります。

  1. 障害者であることを第三者に知られる可能性
  2. 申請や更新が難しく感じる
  3. 精神的にストレスとなる場合がある

障害者手帳を取得する義務はありませんが、取得によって生活がしやすくなると期待できます。また、身体障害者手帳は更新が原則不要なため、そういう煩わしさもありません。

しかし、障害者手帳を取得していることで、障害があることを第三者に知られる可能性があります。隠したいと思っている方にとっては、手帳を所有していることで職場など第三者に伝わるかもしれない点がデメリットといえます。

また、人によっては障害者手帳で受けられるサービスや割引制度を「自分が受けていいのか」と悩み、精神的なストレスを感じてしまう点がデメリットです。

障害者手帳の取得方法を解説!

障害者手帳の取得方法は、以下の通りです。

【準備するもの】

  • 交付申請書・診断書の用紙

申請用紙は、福祉課窓口のほか、障害福祉課、保健福祉センター、高齢障害福祉課などで取得しましょう。

【手順】

  1. 指定された病院で診断書を書いてもらう(準備した書類にも記載してもらいます)
  2. 役所へ申請書・診断書・本人の顔写真などを提出する
  3. 障害者手帳が発行される

申請後、身体障害者更生相談所にて等級を判断してもらいます。合わせて、障害者手帳交付の可否についても判断され、認められると判定結果が通知されます。判定通知書は、1~3ヶ月程度で届きます。

【注意点】

  • 交付までに1~3ヶ月程度時間がかかる
  • 耳鼻科医は、各都道府県で指定された場所に限る
  • 市区町村によって制度の名前や書類の形式が違う場合がある

交付されるタイミングで疑問点などを確認しましょう。

障害者手帳|補聴器購入の負担軽減になる?

身体障害者手帳を聴覚障害の判定で取得すると、障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度によって、補聴器購入の補助が受けられます。どのような補聴器を購入したらよいかを耳鼻科医と相談して決定します。厚生労働省が定めた購入基準を満たす場合は補助が受けられ、自己負担が軽減できるのでメリットです。

一例として、フォナックの「ナイーダM30」という器種は、補装具費支給制度を利用すると約6,000円の自己負担で購入することが可能です。この補聴器を通常に購入する場合、メーカー希望小売価格は180,000円ですから、17万円以上の負担減になります。(2023年8月時点の情報です)

ただし、所得など条件によっては受けられない可能性があります。事前に補聴器代の支給申請をしたうえで、どれくらいの自己負担金で済むのかを確認しましょう。

ファミリー補聴器のバナー

まとめ

難聴の方は、聴覚のレベルに応じて障害者手帳を取得できます。障害者手帳があることで、補聴器を購入する際の補助を受けられる点がメリットです。また、日常生活において、福祉サービスを受けられる点もメリットといえるでしょう。難聴の方にとって強い味方となるため、ぜひ取得をご検討ください。

[Q&A]

Q.難聴になってしまい生活に支障が出るほどではないけれど、障害者手帳を発行してもらえる?

A.身体障害者手帳に関しては、生活に支障があるか否かではなく、身体機能の状態が基準となります。そのため、生活に支障が無くても、聴力検査の結果に応じて障害者手帳を支給される可能性があります。まずは、福祉課窓口で申請書や診断書をもらい、指定された耳鼻科で診察を受けてください。

Q.障害者手帳で会社の方に障害者であることを知られたくないけれどどうしたらいい?

A.一般的に障害者手帳の申請は個人の自由です。そのため不要と思えば申請をせずとも、今まで通りの生活を過ごせます。また、障害者手帳を所有していたとしても、業務に支障がでないなら雇用先への告知義務はありません。障害者手帳の有無に関わらず、難聴によって業務への支障が想定されるならば、予めその事実を伝えることで合理的配慮を受けやすくなります。自身の能力と業務内容をしっかりと把握した上で、伝えるべきか伝えないべきかを検討すると良いでしょう。