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補聴器について

聴覚過敏の診断方法は?音が気になる原因や対策法も紹介

ファミリー補聴器店長の吉野です。この記事では、聴覚過敏について診断方法や原因、治療方法について説明します。

「人が多い場所での音が気になる」「空調や機械の音が気になって我慢できない」といった音に不快感を覚える症状がある方や、聴覚過敏かどうかを知って対策したい方はぜひ最後までご覧ください。

聴覚過敏とは

聴覚過敏は視覚や味覚、嗅覚・触覚などに起こる感覚過敏の1つです。何気ない音にも敏感になり、音が大きく響いて不快感を覚えるといった症状があります。

聴覚過敏の定義は明確に定められていません。疾患ではなく特性であり、主観的な症状であるため医師によってとらえ方が違ったり、診断が異なったりする場合もあります。

聴覚過敏のある方が気になる音として、次のような例が挙げられます。

  • 子どもの声や笑い声
  • 電車のアナウンス
  • ヒールなどの足音
  • 掃除機の音
  • 食器や金属がぶつかる音
  • 扉が閉まる音

これらの音をまわりの方よりも敏感に受け取り、我慢や気にしないでいることが難しいと感じます。苦痛や不安を感じて眠れないこともあります。

聴覚過敏の診断方法

聴覚過敏は耳鼻咽喉科での問診や検査で診断されます。問診ではどのような環境・音で不快感を覚えるかや耳の外傷・ストレスの有無などを詳しく伝えましょう。聴覚過敏そのものの検査ではありませんが、原因となる聴力や内耳機能、耳小骨筋反射に問題がないかを調べます。

聴覚過敏の定義ははっきりと定められていないため、別の病院でも同じ診断が出るとは限りません。

また、聴覚過敏は自閉症スペクトラム障害の特徴の1つとして挙げられています。そのため「小児期より苦手な音がある」「相手の気持ちを読み取りにくい」など、自閉症スペクトラム障害に関する質問や心理検査を行う場合もあります。

聴覚過敏の原因と治療法

聴覚過敏の原因として、次の3つが挙げられます。

  • 耳の疾患によるもの
  • 脳の疾患によるもの
  • ストレスによるもの

嫌悪感がある音や環境をはっきりさせて原因を特定し、疾患の治療やストレスの解消につなげます。原因によって通う診療科も異なります。

原因➀:耳の疾患によるもの

聴覚過敏の原因として、耳の疾患によるものがあります。

  • メニエール病
  • 突発性難聴
  • あぶみ骨筋反射異常

メニエール病や突発性難聴といった、内耳の障害による感音性難聴だと、音を調整・伝達できずに鼓膜のダメージが大きくなり、聴覚過敏の症状が出やすくなります。

あぶみ骨筋反射異常は、耳小骨にある「あぶみ骨筋」の反射が弱くなる疾患で、聴覚過敏の原因の1つです。

耳鼻咽喉科で耳の疾患だと診断されたら、次のような治療を行います。

  • 耳鳴りの治療に使われるTRT療法
  • 補聴器で音をしっかり送り、脳の興奮を抑える治療
  • ステロイド・抗ウイルス薬・ビタミン剤などの内服療法

疾患の治療により、聴覚過敏の改善を目指します。

原因➁:脳の疾患によるもの

聴覚過敏の原因として、脳の疾患によるものがあります。

  • 偏頭痛
  • てんかん
  • 発達障害(ASD・ADHD)

神経内科にて痛み止めや抗てんかん薬、精神刺激薬などによる薬物療法を行います。

発達障害の場合は、薬物療法に加えて日常生活で不便な点を改善できるように生活訓練を行います。

原因③:ストレスによるもの

聴覚過敏の原因として、心理的要因・過度なストレスによる場合もあります。

  • うつ病
  • 不眠症
  • 不安や過度な緊張
  • 自律神経の乱れ
  • ほかの感覚過敏症

精神科・診療内科を受診して、ストレスの原因を突き止めることが大切です。

カウンセリングや内服による治療を行います。ストレスのかからない環境づくりや生活習慣の改善も大切です。

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聴覚過敏に対して日常生活でできる対策

これまで紹介したように、聴覚過敏では症状が出る原因に合った治療が求められます。聴覚過敏の症状に対して、日常生活でできる対策を紹介します。

  • 音が多い場所に行かない
  • 一時的に耳栓をつける
  • イヤーマフをつける
  • ノイズキャンセリングイヤホンを使う
  • 音が発生する家具や家電にカバーをかける
  • 静かな場所で休む時間を作る
  • ストレス解消に努める
  • 聴覚過敏保護用シンボルマークをつける

一時的に音を遮断するのに耳栓は役立ちますが、症状の慢性化につながりやすいので長時間の使用は避けましょう。聴覚過敏の症状は長く続きやすいため、生活環境の見直しや職場での合理的配慮が求められます。

職場では「ノイズキャンセリングイヤホンの使用を相談する」「音が少ない場所にデスクを移す」「音の刺激でつらい時や休憩中に過ごせる場所を作る」など、集中できる環境を整えられるとよいでしょう。

また、聴覚過敏をまわりの方に知ってもらう手段として、聴覚過敏保護用シンボルマークがあります。データが無料配布されているので、ダウンロードして活用するのもよいでしょう。

医師の診断を受けて適切な治療を

聴覚過敏は、まわりの方が気にならない程度の音に不快感を覚え、ストレスや不眠症など日常生活に支障をきたします。

疾患ではなく特性や症状の1つであり、定義も明確ではありません。医師によって診断が異なる場合もあるため、必要であればセカンドオピニオンを受けましょう。原因である耳や脳の疾患、ストレスに合わせた治療が求められます。

Q&A

➀聴覚過敏はどのように診断しますか。

⇒症状が出る状況や苦手な音を伝え、耳や脳の機能に異常がないか、過度なストレスがないかを調べます。

➁聴覚過敏だと思ったらどこに行けばいいですか。

⇒まずは耳鼻咽喉科で症状を伝え、耳の疾患がないかを診てもらいましょう。